どうして知らない・理解できない物事、人に会ったとき不安や攻撃的になるのか、その対処とは
- popo
- May 23
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Updated: May 27
「なんだか怖いな」「よくわからない(人)だな」…と感じたときの、心のしくみについて書いてみたいと思います。
たとえば
見たことのない習慣や文化にふれたとき
自分とは考え方や見た目がまったく違う人に出会ったとき
子どもが「なんであの人、○○なの?」と聞いてきたとき
そんなとき、私たちはどうして不安になったり、時にちょっと攻撃的な気持ちになってしまうのでしょうか?
思い込み、差別や偏見などとも繋がってしまいかねない私たちの中にあるこの反応。
ですがこれは、人間の脳と心のごく自然な反応でもあるのです。
● 脳は「知らないもの」を危険だと感じやすい
私たちの脳は、「見慣れたもの」「知っているもの」=安全、「知らないもの」=ちょっと危ないかもよ、と判断する傾向があります。
これは、ずっと昔から私たちの命を守ってきた本能的な仕組み。
扁桃体という不安や恐怖を感じたときのアラーム機能を持つ部分が作動します。
自分の知らないもの、人は予測や制御することが難しいため、危機感や違和感として自分の命を守るために素早く脳の中で処理をされるのです。
たとえば、知らない場所に行ったとき、知らない人に会ったときに警戒するのは、私たちの脳が『万が一に備えるため』に働いているからです。
だから、「わからない」「なんか変かも」と思ったとき、不安になったり、警戒したり、ドキドキしたり、ちょっとイライラしたりするのは自然なことなのですね。
悲しく映るのは”精神疾患をもつ”と言われる人々への過度な偏見と差別。
犯罪の報道の際には「精神疾患があった」「精神科通院をしているらしい」などの文言をいれることで、案に「危険だ」というメッセージを伝えているように受け止められることがあり、差別や偏見を助長しているように感じられています。
決してそんなことはありません。
精神科や施設で働いてきましたが、こういった報道を見る度に憤りを覚え、誰にでも心の悩みや問題があるにもかかわらず、人々をメンタルヘルスから遠ざけているようで本当に悲しくなってしまいます。
● 人は「自分の枠」に当てはめて考えるクセがある
脳は日々たくさんの情報を処理しているので、物事をざっくりとあるパターンに当てはめて考えようとします。
「こういうときはこうするもの」「○○な人は××」といった具合に、出来事、食べ物、人、場所、行動…あらゆる物事について、こういうものだ、という枠組みを私たちは無意識にも作り上げて持っています。
そうすることで処理判断するスピードを格段にあげてスムーズに生活しやすくしているのです。
ですが、自分の「いつものパターン」や「枠」に合わない人や出来事に出会うと、「えっ、どうしたらいいの?」と混乱します。このときに、不安や拒否反応が出やすくなるのです。
これは決して「心が狭いから」でも「優しくないから」でもありません。
命を守るためにアラームが正常に反応している結果、誰にでも起こる、ごく自然な心の動きなんです。
● 「知らなかった」ことは「理解できる」に変わっていく
しかし、警戒しすぎて相手を傷つけてしまったり、印象で決めつけてしまって根拠のないうちに遠ざけてしまったり距離をとってしまう行動をしてしまうことも少なくありません。
命を守るための脳のアラーム機能の影響ではあるのですが、現代ではその結果、思わぬ差別や偏見に繋がってしまい、トラブルとなってしまうことも少なくありません。
しかし、それに気づくことで乗り越えていくことは可能です。
うれしいことに、心や脳は「経験」や「知ること」で変わっていきます。
「大丈夫だった」「こういうことだったのか」といった経験を重ねることで、新しく枠を作り上げていき、段階的に不安や警戒心を和らげていくことが出来るようになるわけですね。
たとえば、最初は怖かった外国の食べ物を、何回か見たり、食べたりしたらおいしく感じるようになったことはありませんか?
同じように、人や文化、考え方に対する不安や違和感も、「知る」「対話する」「触れる」ことで、自然と和らいでいきます。
なのでまずはちょっと知ってみる、聞いてみる、話してみる、挑戦してみることをしてみると「あれ、思ってたのと違うぞ」と情報や経験が自分の脳に新しく入力され更新されます。
子どもにも、「わからないからこそ聞いてみよう」「調べてみよう」「まだ知らなかった世界があるのかもしれないね」などと伝えてみるのもいいですね。
● 違いに出会ったときこそ、自分の心にやさしくするチャンス
「どうしてこんな気持ちになるんだろう?」「このモヤモヤには、どんな意味があるんだろう?」
そんなふうに、自分の心を観察してあげることも、とても大切です。違いを感じたときこそ、自分の内側にやさしく目を向けてみてくださいね。
もしかしたら、自分の中に合った価値観や不安感、考え方に気づくことが出来るかもしれません。
私たちの抱く「不安」や「違和感」は、決して悪者ではありません。それは、自分の命を守る正常な心の働きでもあり、もっと安心したい、まだ理解できていないことがあるというサインでもあるのです。
私たちは日々「わからないもの」「違うもの」に出会う機会がたくさんあります。
私自身もロンドンに来てからその多様性の中で新しい出会いや発見がたくさんあります。
わからないことは、必ずしも避けるべきものであるわけではない、わからないことを印象で決めつけず、まずは理解しようとしてみる…
そんな自分と他者をつなぐやさしいまなざしを、育てていけたらいいなと考えています。
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