海外移住のストレスと適応
- popo

- 4月21日
- 読了時間: 7分
4月に入り、日本は新年度を迎えましたね。
新たな環境が変化された方も、変化に立ち会われた方も、あまり大きな変化を感じていない方も、みなさんそれぞれかと存じます。
私の周りでも、日本の年度変化に伴いご帰国される方、新たにイギリス・ロンドンをはじめ、アメリカ、ヨーロッパ圏、中国などのアジア圏、オーストラリアなど、新天地にて生活を新たにされる方もたくさんいらっしゃいました。
この時期は別れと出会いの季節だなあと、いつもしみじみする思いがわいてきます。
海外で暮らすということは、新しい景色に出会うことでもあり、同時に、これまでの自分の足場が少し揺らぐ体験でもあります。
特に、誰かの仕事に帯同して移住する場合、その変化は自分で選んだようでいて、どこか「自分だけの選択ではない」「そうせざるを得なかった」といった感覚を含むこともあります。
それはときに期待や希望といったポジティブな感覚を含むこともあれば、孤独や不安といったつらく感じられるような感覚を含むこともあります。
今日は、海外赴任に帯同するパートナーやご家族の中で静かに起こりやすいこころの動きについて、少し丁寧に言葉にしてみたいと思います。
それぞれの立場で起こる、こころの揺れ
海外生活の感じ方は、人によって本当にさまざまです。
ポジティブに感じても、ネガティブに感じても、いけないことはなにもなく、自分が感じるままの気持ちが自分にとっての大切な思いであることを強くお伝えしたく考えています。
バックグラウンド、状況、考え方、感じ方…そういったものが人それぞれ違うのですから、海外生活がいいか悪いかというのは決定されているものではありません。
たとえば、それまで住んでいた環境(たとえば日本)で当たり前にあった・出来ていたことが、移住先でできなくなってしまう、再発見していく必要が出てくることは、多くの方が経験されることでしょう。
移住先の方がよかった、と思えるものもあれば、言葉が思うように通じない、環境や文化がことなりなかなかなじめない、医療や地域のサービスが異なる、制限が生じる、友人や家族など知り合いがいない…
こうした日常にちりばめられた小さな苦しさが積み重なり、生活するハードルが上がったり、同じことをするにもエネルギーや気力を必要とすることもあるでしょう。
また、これまで仕事をしていた方が、一度キャリアを手放すことになったとき。
日々の忙しさからは解放される一方で、「社会とつながっていた自分」が少し遠くなるような、そんな感覚が生まれることがあります。
そうしたとき、自分の役割や価値を、どこに置けばいいのかわからなくなることがある、無力感や社会から取り残されているような感覚を抱くことがある――これはとても自然な反応です。
お子さんと一緒に来ている場合は、また別の揺れが生まれます。
新しい環境に戸惑う子どもを見守りながら、「この選択でよかったのかな」とふと立ち止まる瞬間もあるかもしれません。
「子どもは環境に慣れるのが早い」「だいたい〇か月くらいでなれるよ」ということもよく聞かれますが、その戸惑いとストレスの渦中にあるときには、そのようなアドバイスが逆に苦しくなったり、今が苦しいからそんな先のことは考えられない、という思いがわいてくることも少なくありません。
親としての責任感と、どうにもできない現実とのあいだで、こころが張りつめることもあります。
親自身が新しい環境にストレスを抱え、慣れていく道の上にいるときに、同時に子供の心身のケアをすることは決して簡単なことではありません。
むしろ不安や張り詰めた緊張などからイライラしやすくなったり、悲しくなったりしてしまうような場合もあるでしょう。
海外赴任をすることになった方(家族に来てもらっているご本人)も、状況は様々です。
期待とやりがいをもって前向きに取り組みたい、という場合もあれば、希望せず海外赴任が決まり、来てみたけど思っていた生活とのギャップがあり、仕事や生活に苦しさが生じて余裕がなくなってしまう…といった場合もあるでしょう。
一方で、もともと海外での生活を楽しみにしていた方にとっては、この変化は「広がり」や「可能性」として感じられることもあります。
新しい文化、人との出会い、これまで知らなかった自分の一面…刺激的で彩り豊かな生活を心から楽しむ方もいらっしゃいます。
このように、同じ環境でも、その感じ方や受け取り方は本当に人それぞれなのです。
「移民ストレス」という見えにくい負荷
海外で暮らすとき、多くの人が経験するストレスがあります。
言葉の壁、文化の違い、気軽に頼れる人がそばにいないこと…
こうした負荷は、心理学では「移民ストレス」と呼ばれています。
これは特別なことではなく、環境が大きく変わったときに起こる、ごく自然な心の反応です。
気分が沈んだり、人と会うのが億劫になったり、些細なことで疲れやすくなったりするのも、このプロセスの一部と考えられます。
海外生活には、よく知られた変化の流れがあります。
最初は少し楽しくて、そのあとに疲れや戸惑いがやってきて、少しずつ慣れていく。
けれどこの変化は、一直線ではありません。
「少し楽になったと思ったら、またしんどくなる」そんなふうに、波のように揺れながら進んでいきます。
だからこそ、今しんどいと感じていることも、「どこかおかしい」のではなく、大切な心のプロセスの中にあるものとして見てあげても大丈夫です。
揺れながら必要な時間をかけて自分なりに適応しようとしていく…
そういうプロセスがあるのですね。
誰かと比べてしまうとき
海外生活の中で、ときに同じような立場の人の様子がより目に入りやすくなることがあります。
「楽しそうにしている人」「うまくやれているように見える人」
そんな姿に触れると、自分だけが立ち止まっているような、うまくいっていないような、しんどいような…
そんな風に感じることもあるかもしれません。
けれど、私たちが見ているのは、その人の「一部分」です。
背景にある他者の葛藤や疲れは、外からはなかなか見えないものです。
比べてしまうこと自体は、人として自然なこころの働きです。
比べられてつらくなってしまうようなときには、
「私は今、どんな状態にいるんだろう」
「自分は今〇〇な気持ちなんだなあ」
と、優しく自分に目を向け直してみてあげてくださいね。自分の気持ちに目を向けてみることで少しだけ呼吸が楽になるかもしれません。
自分の気持ちを、置いていかないこと
海外生活の中で大切にしたいのは、「うまくやること」よりも、「自分の感じていることに気づいていること」かもしれません。
・少しさみしい・なんとなく不安・思っていたより疲れている
そうした小さな感覚を、なかったことにしないで、そのまま置いておくこと。
そしてできれば、誰かと分かち合える場所を持つこと。
研究でも、人とのつながりは、こうしたストレスを和らげる大きな支えになることが知られています。
一緒に住んでいる家族、離れた場所にいるけど連絡することのできる家族や友人、身近なサポート、頼れるコミュニティ…
そういったものをぜひ活用し、つらさやしんどさを一人で抱え込まず、分かち合ったり受け止めてもらったりしながら、こころの健康も大切に過ごしていただけたらと考えます。
最後に
海外での暮らしは、誰かと同じように進めるものではなく、それぞれが違うペースで歩いていくものです。
早く慣れる人もいれば、ゆっくり時間をかけてなじんでいく人もいます。
どちらも、間違いではありません。
もし今、少ししんどさを感じているとしたら、それは「適応していない証拠」ではなく、むしろ、ちゃんとこの環境と向き合っている証でもあります。
どうか、あなたのペースで。
こころが少し疲れたときに、立ち止まれる場所を、自分の中にも、外にも、持ちながら。
その時間ごと、大切にしていけますように。
*Your Perchでは、個別相談やオンラインのグループワークも行っています。
グループワークでは各回テーマがあり、同じような悩みを持つ人とつながり、安心して話し合える場を大切にしています。(たとえば、移住ストレス、生活のストレス、海外での子育ての悩み…など)
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