AI相談の光と影。研究から見えてくることとは
- popo

- 7月3日
- 読了時間: 5分
みなさんはAIに相談をしたことはありますか?
最近は、「ちょっと相談したい」と思ったときに、ChatGPTなどのAIを利用する人も増えてきましたね。
すぐにアクセスできる。
夜中でもすぐに返事をくれる。
責められずに話を聞いてもらえる。
頭の中を整理する手助けをしてくれる。
そんな便利さに助けられた経験がある方も多いかもしれません。
実際、世界の研究でも、AIはメンタルヘルスを支える新しいツールとして注目されています。
一方で、多くの世界の心理学の研究者、臨床家たちは、「AIにできること」と同じくらい、「AIだけでは難しいこと」にも目を向けています。
便利なAI相談の光と影、メリットとリスクとなりうる部分について考え、日常で便利に安全に活用していく方法を一緒に考えることができたら幸いです。
⭐AIは「最初の一歩」を助けてくれる
AIの大きな強みは、いつでも、誰にも知られずに相談できることです。
不安な気持ちを書き出したり、自分の考えを整理したり、気持ちを言葉にして表してみたり…。そうした時間をつくることは、気持ちや考えの整理にとても役立つ可能性があります。
誰にも話せなかった気持ちを、初めて言葉にできるきっかけとなる人もいるでしょう。
場合によっては唯一といっていいほど良い理解者となってくれるような、そんな感覚を抱く方もいらっしゃるかもしれません。
⭐人だからこそできることとは
心理療法の研究では、心が回復していく大きな力の一つとして、「治療同盟(Therapeutic Alliance)」という考え方があります。
これは、安心して話せる相手との関係そのものが、回復を支えるという考え方です。
人との関係では、ときには誤解が生まれたり、考え方が違ったりすることもあります。
それでも話し合い、お互いを理解し直す経験が、少しずつ「人を信じても大丈夫かもしれない」という感覚を育てていきます。
この「関係の中で変わる経験」は、今のAIにはまだ代わることが難しい部分です。AIは情報をくれたり、頭の整理を手伝ったりしてくれますが、人間のように関係(relationship)を結ぶことは難しい。
言葉のやりとりをする中で、誤解が生じても、それを修復できる、やり直せる、という過程、話しても大丈夫だという安心を培っていく…生きた人間関係の中で育む関係の力、この過程そのものが大切な治療的役割を担っている、と考えられています。
⭐AIだけに頼り続けると…
急速に発展しているAIについて、たくさん研究は行われておりますが、現時点では長期的な研究はまだまだ十分ではありません。
しかし研究者の間では、
人への相談を避けるようになる可能性
自分の考えが修正されにくくなる可能性
AIとのやり取りに依存しやすくなる可能性
などが議論されています。
つまり、「そうなる」と証明されているわけではありませんが、注意深く見守る必要があるテーマです。
AIは基本的に受容的で否定されづらく、反応も柔らかで、短期的な安心感を抱きやすいですが、他方で、長期的には「人に相談すること」から遠ざかる、「人に相談する練習」の機会が減少してしまうという懸念も同時に議論されています。
⭐対人相談を考える場面
以下のような状況では、人間の相談先を優先されることを強くお勧めします。
死にたい、消えたい、自傷したい気持ちがある。
眠れない、食べられない、仕事や育児、日常生活がが明らかに回らない状態が続く。
幻聴、極端な被害感、現実検討の低下がある。
DV、虐待、性被害、いじめなど対人被害が関わる。
家族・職場・文化背景をふくめた複雑な調整が必要。
「AIに言うことで楽になる」だけでなく、「人に言えなくなってきた」と感じる。
相談をする際の目安としてもご参考にしてみてくださいね。
⭐AIと人、どちらかではなく「両方」の使い分けを
臨床心理士はAI相談に否定的なんでしょ、と言われることがありますが、これはとても悩ましいなあ、と感じています。
私は、AIは「最初の一歩」を支えてくれる、とても心強い道具だと思います。
いつでも、どんなときでも聞いてくれる、聞けばすぐに返事をくれる、そんな存在となりえますよね。
苦しくてすぐにでも聞いてほしいようなとき、少し気持ちを落ち着かせてくれるような存在になることもあるかもしれません。
一方で、人生の大切な場面では、人と一緒に考えることにも、代えがたい価値があります。
時に意見の相違がある、上手く伝わらないことがあるのも現実の人間関係。
そういった感覚を人間関係の中で育んでいくことは、社会的な生き物としての人間が生きていくうえで、重要なスキルになっていくのではないか、と私は考えています。
誰かに話し、「そう感じていたんだね」と受け止めてもらうこと。
ときには違う視点をもらうこと。
迷いながらも、それを抱えながら一緒に答えを探していくこと。
そうした時間は、単に問題を解決するだけではなく、「人とのつながりの中で安心を取り戻す」という、人間ならではの回復の力につながるのではないでしょうか。
参考論文
Jun-Seok Sohn et al.
Systematic review and meta analysis of chatbots in the management of depressive and anxiety symptoms
Malouin-Lachance et al. (2025, JMIR Mental Health)
Does the Digital Therapeutic Alliance Exist? Integrative Review
Zhang et al. (2025, Journal of Medical Internet Research)
Generative AI Mental Health Chatbots as Therapeutic Tools: Systematic Review and Meta-Analysis of Their Role in Reducing Mental Health Issues

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