私たちはどれくらい心の問題を経験するのか。世界のデータから見えてくること
- popo

- 3月13日
- 読了時間: 7分
メンタルヘルスという言葉は、以前よりもずっと身近に聞かれるようになりました。
でも、実際にはどれくらいの人が心の問題を経験しているのでしょうか。
そして、どれくらいの人が支援につながっているのでしょうか。
今日は、世界、日本、イギリスの研究や統計をもとに、少し数字で見てみたいと思います。
WHOの報告によると、
世界では約8人に1人(約11億人)が精神疾患を抱えているとされています。
最も多いのは
不安障害
うつ病
で、うつ病は 世界で最も大きな障害原因の一つとも言われています。
また、人生全体で見ると
約3~5人に1人が人生のどこかで精神的な問題を経験する
思春期の子どもたちでは
およそ5人に1人が精神的な困難を経験する
という研究もあります。
つまり、メンタルヘルスの問題は特別な誰かのものではなく、
とても多くの人に起こりうる人間の経験の一部なのですね。
一方で、ここに重要な事実があります。
それは、必要な支援につながっていない人が非常に多いということです。
世界では
高所得国でも約35〜50%
低・中所得国では70〜80%以上
の人が必要なメンタルヘルスに関する治療やケアを受けていない、と推定されています。
その理由としては
偏見(スティグマ)
医療資源の不足
費用
相談しにくさ
などが挙げられます。
つまり、「つらさはあるのだけど、どこにも繋がっていない」という方、苦しさを抱えながら、誰にもつながっていない人が世界に非常に多い、ということ実態があるようです。
⭐イギリスでは?
私が住んでいるイギリスも同様に、心の問題、メンタルヘルスは大変身近な問題です。
イギリスの全国調査(Adult Psychiatric Morbidity Survey)では
成人の22.6%(約5人に1人)が
不安
うつ
強迫症
恐怖症
などの一般的精神疾患(common mental disorders)を抱えていると報告されています。
若い世代ではさらに多く、16〜24歳では約4人に1人が精神的な問題を抱えているようです。
また同調査では
成人の 25%が人生で自殺念慮を経験
約 1%が自殺未遂を経験
という結果も報告されています。
そして近年自殺を目的としない自傷行為の経験は
2007年の3.8% → 2023年には10.3%
と増加しており、とても悲しいことですが若い世代の死亡原因の上位に自殺が含まれるという現実があるとのことでした。
⭐日本では?
日本でも同様の状況があるようです。
約5人に1人が生涯で精神疾患を経験する
と推定されています。
また、日本では年間 約2万人(人口10万人あたり 約15~18人前後)が自殺によりなくなっているという状況です。
長い間、日本は自殺率が比較的高い国として知られてきました。
近年では少しずつ減少していますが、依然として重要な社会課題です。
⭐メンタルヘルスは社会にも大きな影響を与える
精神的な問題は個人の苦しさだけではありません。社会にも大きな影響があります。
WHOによると、うつ病と不安障害による世界の経済損失は年間 約1兆ドルと推定されています。
これは
生産性の低下(仕事が進まなくなる、休む、など)
休職(働けなくなる、休む必要が生じる)
失業
医療費の増加
などの影響によるものです。
このように、メンタルヘルスは決して個人だけの問題ではなく、社会全体の課題でもあるのです。
しかしながら、ここでもうひとつ大切なこととして多くの人が
「病院に行くほどではない」
「でもつらい」
「つらいけど誰にも話してない」
という状態にいることです。
研究でもメンタルヘルスの支援につながる人は(国や所得による差はありますが)実際には、大雑把な表現をすると、約半分程度と言われています。
つまり、実際には表に見えているよりも多くの人が静かに困難を抱えている可能性があるということです。
・聞いてほしいけど、だれに話したらいいかわからない
・まだ頑張れる、
・もっと大変な人はいる、と思う
・誰も聞いてくれない・わかってくれるはずがない
・こんな話をしたら距離を置かれるんじゃないか
・もう戻れなくなるんじゃないか
・自分がダメになってしまうのではないか
・とえりあえずSNSやAIに吐き出す
・安全に話を聞いてくれる人がいればいいのにな
こういった事情を抱えていらっしゃる場合には、すでにあなたの心からのSOSが出ているサインかもしれません。
⭐健康なうちにできること
ここまでだと、少し気持ちが重たくなってしまうかもしれません。しかし、心理学の研究を見渡してみると、別の大切な視点も教えてくれます。
それは、「心の健康は育てることができる」「人は回復していく力を持っている」ということです。
近年の心理学や公衆衛生では、予防(prevention)の重要性が強調されています。世界でも社会情動学習(SEL)、レジリエンス教育、ウェルビーイング教育などが、学校やコミュニティでも広がっています。私自身も行っていますし、イギリスにもそういったコミュニティや学校での取り組みを実際に確認することができています。
それらは、問題が深刻になる前に
心の理解
感情の扱い方、理解する力
ストレス対処
人とのつながり
問題を解決していく力
自分を思いやる力
といった心のスキル(life skills)、心を守る保護因子を育てていくことを大切にしています。
さらに
自分の気持ちに気づく
相手の気持ちを想像する
困ったとき助けを求める
ストレスを整える方法を知る
ものの見方を広げる
こうした日常の小さなスキルたちは、少しずつ学びながら、練習をしながら身につけて行くことができるものであり、特別な人のためではなく誰にとっても役に立つ力と言われています。
⭐心を守るのは「つながり」
多くの研究で繰り返し示されていることがあります。
それは
人とのつながりは最も強い保護因子の一つ
ということです。
話せる場所理解してくれる人。
安心していられるコミュニティ。
そうしたものは、人生の困難を完全に消してくれるわけではありませんが、心を守る大きな支えとなりえます。
多くの人が
「病院に行くほどではないけどつらい」
「まだ頑張れる」
「もっとしっかりしないと」
「誰にも話していない」
「誰にも言う人がいない」
「いえる人がおらずに結局一人で抱えている」
という状況を経験している実情があります。
だからこそ、自分が、あるいは自分の大切な人が、つらくなりすぎる前に心のことを知り、話し、安心できる空間でほかの人の話を聞ける、そんな場所があることはとても大切だと考えます。
そこでは、否定も批判もなく、ただ
「そういう考え方があるよね」
「そういう風に感じるよね」
「こんな方法もあるんだね」
というようにお互いに安全に学びあいながら、理解し気づきあいながら、繋がりの中で支えあっていく。
そんな時間が、人生の中で心を守る力に繋がっていくこともあると考えています。
⭐日常の中に、ほんの小さな工夫から
メンタルヘルスやウェルビーイングは、何か特別なことを急に始めるものではありません。
ほんの少し
心のことを学ぶ
自分の気持ちに気づく
人の話を聴いてみる
ストレスを整える方法を知る
そんな小さな工夫と行動から、始まるものかもしれません。
どんなことをするのか、構えてしまわれるかもしれませんが、実際にはなにも堅苦しいことはなく、こんな感じだったのか、思っていたより気楽だった、というお話もいただきます。
もし、心を大切にしてみたい、自分や誰かを支えうる力を知りたい、自分の気落ちを聞いてほしい、そのようなお気持ちがあり、このブログを読んで気持ちが少し動いた方はここでも、他の信頼できるメンタルヘルスサービスでもぜひ一歩を踏み出して門をたたいてみてくださいね。
急に依頼しなくても、とりあえず質問してみるだけだって全然かまわないのです。
その一歩が、きっと大切な道のりの始まりなのだと思います。


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