セルフコンパッション(自己への慈しみ)とは。甘やかすこととは異なる理解
- popo

- 2月11日
- 読了時間: 4分
セルフコンパッション(self-compassion)は、Kristin Neff(2003)の研究をきっかけに広く知られるようになった概念です。
日本語では「自己への思いやり」や「自分への慈しみ」と訳されます。
それは、自分の苦しみに気づき、それに対してあたたかく応答しようとする姿勢のことを指します。
つらいとき、失敗したとき、思うようにできなかったとき、
私たちは、自分に対してとても厳しくなってしまうことがあります。
「どうしてできないのだろう?」
「また失敗した」
「自分はダメだ」
その声は、励ましのつもりであることもあります。
けれど同時に、強い緊張や不安、恥を生み出し、結果的に自分を苦しめてしまうこともあります。
そんなときに支えとなる考え方が、セルフコンパッションです。
セルフコンパッションは、主に3つの要素から成り立っています。
① 自分への優しさ(Self-kindness)
自分を厳しく裁くのではなく、困っている友人に向けるような言葉を自分にも向けてみる姿勢です。
これは「甘やかす」こととは異なります。とても大切なことなので強調してお伝えさせてください。
自分に思いやり、やさしさを向ける言葉をかけることは、現実を見ないことでも、責任を回避することでもありません。
苦しみがあると認めたうえで、攻撃ではなくケアで応えようとする態度です。
② 共通の人間性(Common humanity)
「自分だけがダメなのではない」という視点です。
失敗すること、迷うこと、傷つくことは、人間である以上、誰にでも起こりうる経験です。
頭ではわかっているはずなのに、苦しい中にいるときには、自分だけがダメなように感じられてしまうことは決して珍しいことではありません。
苦しみの中にいるとき、私たちは孤立しやすくなります。
けれど、そこに「人間としての共通性」を見出すことで、孤独感は少し和らぎます。
③ マインドフルネス(Mindfulness)
自分の苦しみを無視も誇張もせず、巻き込まれすぎずに気づくこと。
感情に飲み込まれる(過剰同一化とも呼ばれます)ことも、感じないように押し込めることもせず、「いま、つらいと感じている」とバランスよく観察する姿勢です。
セルフコンパッションは、「~だから仕方ないよね」で終わるものではありません。
研究ではむしろ、セルフコンパッションが高い人ほど
失敗後の回復が早い
自己改善への動機づけが保たれる
回避ではなく建設的な行動を選びやすい
ことが示されています。
自己批判が強い状態は、脅威システムを活性化させます。身体は緊張し、防衛的になります。
セルフコンパッションは、その脅威反応をやわらげ、安全感を回復させる働きを持ちます。
安心があるとき、人ははじめて冷静に状況を見つめ、次の一歩を選ぶことができます。
優しさは、前に進む力を奪うものではなく、むしろ土台を整えるものなのですね。
「自分に優しくする」と聞くと、やわらかく穏やかなイメージが浮かぶかもしれません。
けれど実際には、そこには勇気が含まれています。
苦しさから目をそらさず、評価やジャッジをいったん手放し、その経験を引き受ける。
それは大変勇敢な作業で、決して簡単なことではありません。
だからこそ、セルフコンパッションは「優しいだけ」ではなく、強さを含んだ姿勢でもあるのです。
もしも今、
恥ずかしさを感じている自分を責めているやらなきゃいけないのに動けないできない自分がつらい、情けない、ダメな人間だ…
そのような思いがあるとしたら。。。
まずはほんの少し、その気持ちに気づいてみることから始めてみませんか。
胸に手をあてて、「いま、つらいと感じている」と静かに言葉にしてみる。
それだけでも、からだのどこかが、わずかにゆるむことがあります。
もし、いま、あなたのなかに
「本当に意味があるの?」「なんだか信じきれない」
そんな思いが湧いてきていたとしても大丈夫です。
その疑いもまた、いまのあなたの大切な一部です。
セルフコンパッションは、頭で理解するだけでなく、体験の中で少しずつ実感されていくものです。
もしかしたら、思っていたのとは違うかたちで、あなたの中に何かを残してくれるかもしれません。
気になったときに、小さなワークから試してみるのも一つの方法です。
あなた自身に向ける思いやりを、ほんの少し、実験してみませんか。

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