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”評価”されないつらさとは

  • 執筆者の写真: popo
    popo
  • 11月7日
  • 読了時間: 7分


「こんなに頑張っているのに、誰もわかってくれない」

「SNSで”いいね”や”♡”がつかない、伸びない」

「自分だけ厳しく扱われている気がする」

「どうしてあの人ばかり評価されるんだろう」


そんな思いを抱えながら、日々仕事や子育て、人間関係の中で人知れず踏ん張っている方は多いと思います。

努力しても報われない、認められない、軽んじられている気がする。こういった思いは決して「心が弱いから」でも「プライドが高いから」生じるものではありません。

むしろ、人が人らしく生きるための根源的な欲求が傷ついたときに起こる、自然で健全な反応です。

最近では仕事や家庭、人間関係だけでなく、SNSにまつわるトラブルもよく見聞きするようになったように思いますが、人間のありのままの欲求とその時代ならではの社会のあり方との相互関係の中で生じている難しさがあるのですね。

評価されないと感じられる、あの人は○○なのにどうして自分は…と人と比較してしまって苦しい思いをされている方へ、少し緩むことが出来るヒントがあることを願いながら本記事をまとめてみます。



〇人はなぜ「評価されない」とつらいのだろう?

心理学の知見から、いくつかの理論でこのつらさを説明できそうです。


 ①公正理論(Equity Theory)

 社会心理学の アダムス(J. S. Adams)によると、人は、自分の努力と報酬のバランスが不公平だと感じると、強いストレスを感じると言います。

「同じように頑張っているのに、なぜあの人だけ評価されるのか…」

 そんな思いが生じるとき、心の中で“釣り合い”が崩れ、憤りや虚しさが生じやすくなるのですね。


 ②承認の理論(Recognition Theory)

 有名なマズローの「承認欲求」や、ドイツの社会哲学者 アクセル・ホネット(A. Honneth) の「承認論」など、他者に「あなたはここにいていい」と認められることは、人の尊厳に関わります。評価されない痛みは、「存在が見えなくなってしまうような感覚」でもあるのです。


 ③自己決定理論(Self-Determination Theory)

 Deci & Ryanによる自己決定理論によると、人には有能感(Competence:有能でありたい)、自律性(Autonomy:自分で選びたい)、関係性(Relatedness:つながっていたい)という3つの基本的欲求があるとされています。そのうちの有能感関係性が満たされないとき、人はモチベーションを保つことが難しくなるとされています。


「外的評価」に依存しやすい現代

 米国の心理学者 Crockerら(2003) は、自己価値のよりどころを「Contingencies of Self-Worth(自己価値の条件づけ)」として整理しました。それによると、「他人からの評価」や「成功」「好かれること」など、外的条件に自己価値を依存する(自分の外側の人や物ごとによって自分の価値を感じる)ほど、心は揺れやすく、傷つきやすくなります。

 一方で、Deci & Ryan(の自己決定理論) が示すように、外発的な報酬や比較が強調される環境ほど、内発的な動機(“自分が好きでやっている”という感覚)は弱まってしまうことが知られています。


SNS上の反応や職場の成果主義、どっち(誰)の方が頑張っている、などといった比較してしまう文化や慣習など、現代社会では「外的承認」がいたるところにあります。

だからこそ、自分の価値が他人の反応次第で変わるように感じるのです。

そして、そこで自分の価値が変わるような気がしてしまうと、外側からの承認や努力への評価や報酬がないことに不安を抱えたり、強いストレスを受けやすくなります。自分自身の頑張りや、思い、学びや経験となった部分への注目は弱まり、意味を見出すことが難しくなって、結果的に苦しくなってしまう場合があるのです。



〇少し楽になるための視点

 ここまでで、なんとなく思い当たるなと感じられた方も少なくないかと思います。

なるほどこういう部分がつらいのかも、と気づきとなる箇所が少しでもあれば、それはもう次のステップへの道筋が見えてきているところでしょう。

以下に、上記のようなつらさがあるときに、どのようにしてちょっと楽になることが出来るかについて考えてみたいと思います。




① どんな思いが隠れているのだろう

誰かや何かに認めてもらえた感じが得られないとき、不満があるとき、どうしてその思いが生じてきているのでしょうか?

本当はどのようにしてほしい、なってほしいと感じているのでしょうか?

怒りや悲しみの裏側にある、本音はなんでしょうか。

その声を見つけて拾い上げてみることで、怒りや不安、受け入れられなさの理由が見えてくるかもしれません。

そしてこれは、決して綺麗なものでなくても、人から受け入れられがたそうに思われるようなことでもいいのです。

だからこそ苦しいのかもしれないのですから、そこに善悪や判断を与えるのではなく、ただ純粋にどんな思いがあるのか、ありのままを探すような働きかけです。


②どんなときに、自分が“報われた”と感じましたか?

 誰かに褒められたとき、誰にも見られていなくても「自分、よく頑張ったな」と思えた瞬間など…。どんなときに「報われた」と思うでしょうか?

これは人によってさまざまな答えがあるものですから、誰かと一緒でなくても全く不安に思われることはありません。

むしろ、自分にとってはこういうときだな、と思えるものをしっかり見つけることに焦点を当てます。

この“内的な報酬”を見つけることで、あなたの中の大切にしている考えや価値観といったものが見えてくるかもしれません。


③ 努力の「方向」と「意味」を見直してみる

 ときに、努力の方向が他者の期待に引っ張られていることがあります。

「本当は自分は何を大事にしたいのか」

「どんな努力なら、自分で誇りを感じられるのか」

この問いを立て直すことで、エネルギーの流れが変わっていきます。

そしてときに、自分自身ではこんなにも努力しているつもりでも、他者からするとそれを受け止められていなかったり、行き違いなどから求めていない範囲のもので理解をしきれなかったりしている場合があることもあります。

努力の方向性や、目的、意味といった部分について整理してみることで見えてくるものがある場合もあります。


④ 承認の“チャンネル”を広げる

ひとりの上司、ひとりの家族、ひとつの場からの評価に依存すると、心がその人や場に縛られてしまいます。信頼できる仲間、専門家、趣味のコミュニティなど、多元的な承認の場を持つことは、レジリエンス(心のしなやかさ)を高めます。

他者からの承認だけでなく、自分で自分の努力や経験をしっかり認めることも大切な承認のひとつです。


⑤ 他者比較やSNSでつらくなったときの視点

 心理学的な側面から考えたとき、SNSなどでの他人の成功・評価は、その人が見せたい部分の断片にすぎないことも少なくありません。投稿や会話の一部が目立って見えるだけで、背景や努力の全体像はわからないことがほとんどです。

そしてひとつひとつの評価や反応が、あなたの価値を決めるものでもありません。

 人は「一部しか見えていない情報」からその人自身の経験などから全体像を想像し、比較してしまうことがよく起こります。だからこそ、傷つきすぎないためにも、その一部を全てだと思い込まない、これは一部に過ぎないのだという前提を持ってみることは大切です。

他者の反応や評価は「相手の現実」であり、あなたの現実の価値や評価と完全に重なるわけではない、という視点を意識してみてくださいね。



🕊最後に —— カウンセリングという選択

「こんなことで相談していいのかな」

「なんか苦しいけど、これといって悩んでることがあるわけではない」

「まだ頑張れる気がするから、もう少し我慢しよう」

そう思う人ほど、心はすでに頑張りすぎていることが多いです。

カウンセリングは、「何か重い問題を抱えた人だけが行く場所」では決してありません。

それは、一緒に心の整理をする時間であり、「頑張り方をいったん立ち止まって見つめ直す場所」でもあります。

どうか、自分の心の声を後回しにしないでください。

「話してみたいな」「誰かに聞いてほしいな」

そう思えたときが、いちばんのカウンセリングの利用のタイミングであるサインかもしれません。


評価されない痛みは、あなたが「自分の価値を信じたい」「がんばりを分かってほしい」と強く願っている証なのかもしれません。外の評価に揺れながらも、自分の小さな“よかった”や“できた”を大切に積み重ねていくことが、静かな自己肯定の土台になります。

あなたの頑張りを、誰かがちゃんと見ている。

そして、なによりもあなた自身で、自分を見つめてあげられますように。

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