子ども連れでの海外生活と「なじむ」までの時間
- popo
- Aug 29
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海外で生活を始めるとき、大きなストレスを感じることがあります。
移住のための準備から、現地で言葉が思うように通じない、土地勘がまだない、雰囲気や習慣の違いへの戸惑い、文化や食事の違い、頼れる人が少ない──そんな環境の中で、孤独や不安、緊張感を抱えながら毎日を過ごしていくことは、本当に大きなチャレンジです。
そしてそれは、大人が感じるのと同じように、子どもにとっても大きな試練となりえます。
子どもは幼いときには特に、自分の感情やストレスへの対処・コントロールする力にはどうしても未熟な部分や難しい側面があります。
自分の意思で「ちょっと外で気分転換しよう」とか「気心知れた友達に愚痴ろう」「美味しいものでも食べに行こうかな」などといった逃げ場を見つけることが難しいことも多いものです。
幼い子供ほど、日常の大半を家族と一緒に過ごします。
だからこそ、親の不安やイライラを間近に感じ取り、まだ言葉にならないストレスを体の中に溜め込んでしまうこともあります。
溜まった泣いたり、イライラしたり、そわそわ不安そうだったり…そんな様子となって表現されてくる場合もあります。
新しい学校や幼稚園(ナーサリー)に通うことは、特に大きな挑戦です。
私自身もよく、「だいたい3か月もすれば慣れるよ」と先に海外生活をされている方から聞いたことがありました。
たしかに、時間とともに環境に適応していく力は子どもにも備わっていて、その力は目を見張るものがあります。そしてその過程でぐんと成長する姿を見ることもあります。
しかし、その「3か月」は決して自然に過ぎ去る時間ではありません。
毎日、毎時間が“工夫の連続”です。
よく見てみると、知らない言葉に戸惑いながら、泣きながら、懸命に体当たりで関わっていく子どもたちの姿を見ることがあります。そんな子どもたちを支える親も、自分自身の生活を守りながら、子どもの感情を受け止め、支え、学校とのやり取りをこなし、同時に自分の心も折れないように踏ん張っています。そこには、見えない大きな努力と、互いを支え合う工夫がたくさん詰まっています。
新しい環境に適応することは大きなエネルギーを使います。
脳は「慣れない状況」を危険とみなし、心と体を常に緊張させるモードに切り替えるからです。大人も子どもも、日々あらゆる時間の中でエネルギーを大量に消費しながら、毎日を乗り切っているのです。だからこそ、「なんとかなる」「がんばらなくちゃ」と自分に言い聞かせるより、「大変な時期だから、出来る限りで。できるだけ省エネでいこう」と意識してみることも大切です。
・食事は少し手を抜いても大丈夫
・家事は“最低限”で十分
・頼れる人や場所には、遠慮なく頼っていい
こんなふうに「やらないことを決める」「積極的に手を抜く」ことが、適応期を乗り越えていく大きな助けになりえます。
私自身も、慣れない土地で生活する際にはやはりストレスがかかっていることを感じました。
なにより、就学前後の子どもは、おしゃべりが好きな時期にお話できない、何を言っているのかわからない、など伝えられないつらさと心細さに苛まれ、体調が不安定で学校だけでなく生活にも支障が生じる時期がありました。
ストレス反応の生じ方は人それぞれでしょうが、我が家も我が家なりの適応する時期を過ごした日々を忘れることはないでしょう。
新しい土地への移住、海外生活は華やかに見えることも多いけれど、実際にはたくさんの大小さまざまな大変さの積み重ねがあり、工夫の連続です。だからこそ、「自分ひとりで頑張らなくちゃ」「ちゃんとやらなくちゃ」と思いすぎる必要はありません。
洗濯は毎日回して片づけられなくたって、明日だって明後日に回したって大丈夫。
ご飯は毎日作れなくても、出前や外食、コンビニやスーパーで買える簡単なご飯で済ませる日があったっていい。
何もする気持ちになれず、外に出られないような日だってあるかもしれません。
それは頑張り続けて疲れちゃったよという心身のSOSなのかもしれません。
自分の心身の健康を大切にすることで、身近な人の健康も守れるかもしれません。
安心して生活ができる基盤が整って来ることで、今度は外に出て行ってみよう、挑戦してみようという気持ちがだんだんと湧いてきます。
同じように工夫しながら暮らしている人がいて、支え合いながら歩んでいる人たちは、自分からは見えづらいだけで確かにいます。
仲間がいる…そう思えると肩の力が少し抜ける場合もあるかもしれませんね。
もし今、不安な気持ちを抱えている方がいたら──
その不安は今を頑張っているからこその大切なお気持ちでしょう。
さらに、子どもと一緒に少しずつ環境に馴染んでいく過程には、試行錯誤を重ねながら工夫や支え合いを取り入れながらを確実に時間は進んで行きます。
お住まいの地域の日本人のコミュニティや、難しい場合はネットやSNSなども利用できそうな資源も上手に活用されてみると心強いかもしれません。
自然と時間が過ぎて、3か月経てば、ただ自然に慣れる…というのではなく、毎日の素晴らしい工夫と努力の積み重ねで“なじんでいける”のですね。
どうか、がんばりすぎず、省エネで。
そして何より、「ひとりじゃない」と思い出せますように。
活用できる資源を活用しながら、必要に応じてガス抜きをされながら、素敵な時間がまた重なっていくといいなと願っています。
(写真はロンドンのRegent's parkです。Geeseがゆったりと過ごしていて、時間がゆったり流れているように感じられたときの写真です。)
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