top of page

誰の心の中にも潜む差別や偏見。バイアスについて考える

  • Writer: popo
    popo
  • 19 hours ago
  • 7 min read

Updated: 1 hour ago


突然ですが、あなたの中には差別や偏見といった考え方はあると思いますか?


「とても気を付けていて、そんなものはない」と思われる方もいれば「あるかもしれない」と思われる方、「実はあることを感じている」という方…さまざまいらっしゃるかもしれませんね。


私は心理に関わるお仕事をさせていただいておりますが、常にこのことは私の心の中にあり、誰かと関わる際に私の言動を慎重にさせます。


誰にとっても大切な部分かと思いますが、私自身の経験からも理解されることとして、いわゆる支援者(医療従事者、カウンセラー、セラピストを名乗る人など)はより注意深くいるべきポイントであると感じています。


なぜなら、支援者と呼ばれるようなお仕事をされていると、どうしても「支援する人」と「支援される人」という上下関係(実際上下関係などないのですけれども)のような構図となりやすく、立場や言葉の力が大きく作用しやすくなる可能性をはらんでいます。


なので、支援者側の一方的な助言や考えを押し付けるようなことをしていないか、かなり注意を払います。


そもそも、支援者は、支援を受けている方よりエラいわけでもありませんし、その方がその方の人生をどうすべきかについて、「こうした方がいい」とか「それはやめた方がいい」など、その方の大切な人生の決断について基本的に言えるはずもありません。


Cultural Humility(文化的謙虚さ)

という考え方があります。これは、「自分が“知らない”という前提に立ち、相手の文化や背景に学び続ける姿勢」を説明する言葉です。


「そうだよね」と思えることではありましたが、私の場合はイギリスで過ごしまさに多様性の中で過ごす中で、やっとこの言葉の重みをずっしりと感じることが出来たように感じています。


いろんな人種、宗教、考え方、家族背景、生育歴をもつ方々がいる中で、見た目の印象、話し方、人種、宗教などによって、「ああ、じゃあきっと○○だろう」とか、○○だろう、と思うような出来事を選択的に理解して確証バイアスによって理解してしまう、というようなことが生じていることを大なり小なり見かけることがあり、同時に、そういった偏った見方にそれぞれが敏感なため差別や偏見的な表現とならないように慎重に言葉を選び、振る舞いやあり方が意識されていることを感じています。



☆人はなぜ差別や偏見を持つのか?

 差別や偏見についての研究は世界中で数多くなされています。

  そのうち、社会心理学の研究の一部を以下に簡単にご紹介してみたいと思います。


①カテゴリー化(categorization)

 私たちは情報処理を効率化するためにグループ分けを無意識に行う性質があります。

複雑な情報をシンプルに理解するための自然な働きでもあります。

毎回ひとつひとつのことについて真剣に深く考えていては脳のキャパシティオーバーになってしまいます。

 たとえば、わかりやすい例で言うと、「男は○○だ」「女なら○○だ」といった考え方もカテゴリー化に含まれます。

 髪が長くて、スカートをはいていて、名前の最後に「子」がつくといった場合には、その人は女性であるだろう、など、「Aという場合はB」というような考え方も含まれます。

複雑な情報処理をシンプルにしてくれることで、エネルギー消費を減らし素早く判断が出来るメリットはありますが、その分差別や偏見の温床となりやすい危うさをはらんでいます。


Aという特徴があるときはB、といったカテゴリー化が行われ、イメージが出来上がっていき、そうして自分の中でこういう人はこういうタイプ、こういうときはこうなる、といった考え方が形成されていきます。


そうして今度は新しい物事や人と出会った時に、自分の中にあるどのイメージに当てはまるかというような固定観念(ステレオタイプ)が形成されていきます。


②ステレオタイプ(固定観念)


このように出来上がったステレオタイプは、ある集団に対して過剰な一般化をしてしまうことがあります。

たとえ善意や正義感で言っているつもりの言葉であっても、実はそれが無意識の差別(unconscious bias)となってしまっている、ということも決して少なくはありません。

「○○人は△△という性格だ」「○○な人は△△が得意/出来ない」など多岐にわたります。

このステレオタイプにがっちりと当てはまらないということもよくあることではあるのですが、無意識にこうしたカテゴリー化やステレオタイプといった考え方が影響を与えているので、本人だけではなかなか気が付きにくい性質もあります。

こうしたステレオタイプはレッテルのようにもなり、あるカテゴリーに含まれる人に対しレッテルを張ってしまう、色眼鏡で物事を見ているような状態に陥ってしまうこともあります。


内集団バイアス(ingroup bias)


内集団(Ingroup)と外集団(Outgroup)という考え方があります。

内集団とは、自分と似た人や自分が所属するグループのことで、好意的になりやすい特性があります。

反対に外集団は、自分と違う人や別のグループのことで、過小評価したりネガティブな印象を抱きやすい心理が働きやすくなります。

こうした特性から、私たちは内集団バイアス(内集団びいき)という心理が働くことがあり、自分と似た属性の人や所属するグループについてポジティブな評価を抱きやすく、反対に外集団には否定的でネガティブな評価を抱いてしまいやすくなることがあります。

身近な学校や会社といったところでも、規模が大きくなって国別でも、「うちのクラス、他のクラス」「私の学校、他の学校」「文系、理系」「○県人、△県人」「日本人、外国人」…といった具合に、種類は実に様々です。

そして、無意識にも内集団バイアスが働いた表現や考え方が生じていることがあります。

バイアスがかかっていると、どうしても偏った見方・考え方に傾いてしまっていたり、そうではない部分を見落としてしまい、肯定したい事実を無意識にも選択的に取り入れてしまい、「やっぱりそうだよね」といった考えに至ってしまいやすくなることがあります。


タジフェルの「最小条件集団実験」では、全く意味のないグループ分け(Aグループ、Bグループ)を行いましたが、それだけでも内集団バイアスが確認されたという研究結果も存在しています。

自分のグループを大切にしたい、守りたいといった思いは、グループの外の人をネガティブに捉えたり下に見てしまったりすることともなりやすいのですね。


☆差別や偏見を減らしていくには?気づくには?


差別や偏見は、決して特別な誰かだけが持っているものではなく、私たちの誰もが無意識のうちに持っているものです。

そして簡単になくせるものではないことも大切なポイントです。


人間の認知や心理の働きから考えると、自然なこととも考えられそうですが、だからこそ無意識のうちに思い込みで誰かを攻撃していないか、偏った考え方を持っていないだろうか、と自分の考え方をチェックし、気づくことも大切です。


私生活の中で気を付ける方法としては、まずは「自分の中には偏った考え方が潜んでいるかもしれない」という可能性を意識しておくことも挙げられます。

善かれと思っていたことでも、実はその考え方の根差すところには、考え方の偏りが影響を与えている可能性があります。

また、先の文科的謙虚さの中でもあったように「自分は知らない」ということを理解しておくことも大切ですね。

いくつかの情報からカテゴリー化されてしまう性質を理解したうえで、カテゴリー化されそうなときに「いや、そうじゃないかもしれない」「その根拠はなんだろう」と踏みとどまれればそれをしてみること、あるいは何かの折に「カテゴリー化だな」と気が付くことがあるときにはそれをきっかけに気づいていくことが出来るかもしれません。


強調したいことは、バイヤスを持っていると悪い、とかそういうことではなく、私たちの誰にも共通する性質として、「バイヤスのかかった、考え方、見方の偏りが生じる」ことがあるので、それを前提として理解したうえで、自分の中にはどのようなものがあるかについて注意を払ってみると自分の再発見にも繋がっていくかもしれません。

自分だけでは気が付かないこともあるので、誰か信頼のできる人にお願いをして再発見のお手伝いを依頼してみるのも良いですね。


カテゴリー化やステレオタイプは、複雑な情報をシンプルにして素早く理解しやすくしてくれるメリットがある反面、A=Bといった枠組みとなりやすく、その他の場合を排除してしまう、否定的な捉え方となってしまうなど、差別や偏見に繋がっていってしまう恐れがあります。


つい自分の中のカテゴリーに当てはめてしまっていないか?

それ以外の可能性はないだろうか?


そういったことを時間をかけて振り返ってみることや、「自分は知らない」という前提を持つ文化的謙虚さを持ってみることを意識してみることは、自分の考え方を知るひとつのきっかけとなり、無意識の差別や偏見を減らしていく助けと繋がっていくかもしれません。

Comments


公式LINEアカウントにもお気軽にメッセージください。イベント情報も配信しています。

Your Perch

YourPerch logo

©2024 by Your Perch. Proudly created with Wix.com

Instagram 初心者過ぎて更新はぼちぼち…

公式LINEアカウントはこちら。

ご質問ご相談などお気軽にお送りください。

​イベント情報も発信しています。

Instagramもなるべく頑張ります。

役立つ知識やイベント情報など、

ちまちま発信したいと思います。

bottom of page