日々の生活の中のスキル、SSTとは?
- popo

- Oct 9
- 6 min read
SSTという言葉を聞いたことはありますか?
SST : Social Skills Training は、「社会生活技能訓練」とも呼ばれます。
そういうとなんだか堅苦しい感じがしてしまうかもしれませんが、SSTの内容は、日常生活の中のあらゆる社会的なスキル全般を指すようなイメージです。
たとえば、朝起きたら「おはよう」という。
これは当たり前のように思われるかもしれませんが、立派なスキルの一つです。
また、誰かとぶつかったときに「ごめんなさい」という。これもスキルの一つですね。
全く当たり前じゃないか、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、こういった当たり前に思われるような言葉を伝える、状況にあった言葉を選んで使う、言い方、タイミングなどは、生活の中で教わり経験を重ねて自分の形にしていくスキルでもあります。
たとえば、誰かがぷんぷん怒っているとして、その人に話しかけたいとき、どのように声を掛けますか?
これは、状況や相手にも寄る部分もあるでしょうし、考え方も人それぞれでしょう。
また、自分がちょっと忙しいときに、誰かから頼みごとをされたとき。
どのように返答するでしょうか?
あるいは、忙しいときに、どのようにしますか?
我慢して一人で取り組み続けますか?それとも誰かを頼りますか?
人によっては無口になって頑張るかもしれません。
あるいは、怒ったり泣いたりするかもしれません。
または、誰かと分担できるか相談をするかもしれません。
ひとそれぞれの答えがあるのです。
・・・・こういった人とのさまざまな交流の仕方、伝え方、表現の仕方、これは「スキル」であり、様々な教えや経験から培い自分の中で導き出した答え(スキル)となっているのです。
大切なことには、このスキルには基本的には「これが正解」という絶対的な答えは存在しないということです。
心のお話をするときに、私からよくお伝えさせていただくことの一つには
「こういうときはこうするといい、といった正解や絶対的な答えは基本的に存在しない」
「いろんな考え方、やり方がある中で、その人にとっての正解は何かを探すことが大切」
ということがあります。
人は誰でもわからないという不確かな状況には不安になりやすいですから、答えが欲しくなる(答えを知ることで安心したい気持ちが働く)ことはとても自然なことです。
ですが、前提として基本的には確かな答えがないものですから、すぐには答えは見つからないのです。
自分の考えや気持ち、状況などを整理し考える中で自分の答えを見つけていく、というプロセスを経ていくことが多いでしょう。
SSTについて
私自身、仕事の関係でSSTの講習を受け臨床において実践を重ねてきましたが、当たり前に思われ軽視されがちなことだからこそ、見過ごされがちなスキルや、言い出しづらい悩み、わかってもらえないのではないかという不安や悲しみとして抱え込んでしまう人が少なくないのだということに気が付かされた経緯があります。
ソーシャルスキルというくらいですから、スキルなのです。
なにかしらの形で学び、経験を重ねて獲得していく技術であります。
ですが、形もなければその瞬間事に過ぎ去っていくやり取りの中にあるものですから、何気ない日々の「おしゃべり」として見えてしまったり、みんな当たり前にできている、そんなことで悩んでるなんてと思われないか、と不安になり言い出せないことがある。
でも蓋をあけてみたら、実は「どうやって断ればいいか?」「謝り方はどうしたらいい」といった悩みを抱えているのは自分だけではなかった…ということがあります。
そういった「どうしたらいいか」と悩むことについて、知らなければ対処のしようがなく不安になったり孤独感を感じてしまわれるのは当たりまえなのです。
むしろ、わからない、ということに気が付けたことが素晴らしく、大きなチャンスでもあるのです。
そして大切なことには、そういったソーシャルスキルは「スキル」ですから、わからないことについて学び、練習をすることでスキルを身につけていくことは出来るのです。
SSTの行われ方と実際
SST(Social Skills Training:社会生活技能訓練)は、人との関わり方や気持ちの伝え方などを、具体的に練習して学ぶ心理教育の方法です。
たとえばこんな場面を思い浮かべてみてください。
友だちに「一緒に遊ぼう」と言いたいけど、どう切り出せばいいか分からない
嫌なことをされたけれど、「やめて」と言う勇気が出ない
相手が怒っているとき、どう対応したらいいのか迷う
こうした“日常のちょっとした人間関係の難しさ”を、SSTではロールプレイ(やってみる練習)や話し合いを通して、少しずつ整理していきます。
グループで行う場合もありますし、1対1で行う場合もあります。
グループの場合、最初はロールプレイを恥ずかしく思われる方もいらっしゃいます。
たしかに、グループの人に見られながらロールプレイ(劇みたいなこと)をするとしたら、恥ずかしい思いを抱かれるのは自然なことなので大丈夫です。
SSTのポイントは普段どのようにしているかの様子を理解し、本人がどうなりたいかという希望を踏まえて、改めてどのような表現方法があるかを考えて探し、学び、見つけていくというプロセスです。
私自身、実は最初は勉強不足な部分も多く、SSTの効果のほどはどのようなものだろうかと、半信半疑でした。
しかし、想像していたよりも奥深いもので、グループの場合には参加される方は本当にたくさんの考え方や視点をもっていらっしゃるのだなと気づかされることも多く、最初は半信半疑だった方もSSTを体験してみることで自分と見つめ合ったり、他者との考え方の違いや自分の見え方について発見がある方もすくなくありませんでした。
まとめ
SSTの大切な考え方は、「できる・できない」ではなく「練習すれば上達するスキル」であるということ。
誰かと違ってもいいし、完璧にできなくても大丈夫。
「自分はどんな伝え方がしっくりくるかな?」と考えながら、自分に合うコミュニケーションの形を見つけていくのがSSTです。
子どもだけでなく、どんな年代の大人にも、このSSTという取り組みは大切だなと感じています。
今までこうしていたけど、別の伝え方はないかな。と新しい考えや伝え方を再考する方法として取り入れてみるのもいいですね。
たった一言何かをつたえるだけ…
一見シンプルなことのようですが、実際にやってみると「なるほど、こうすれば伝わりやすいんだ」と発見があります。
そして、人の考え方や感じ方は一人ひとり違うことにも気づくことで、自分にも他の人にも優しくなれます。
スキルを知り、練習する中で、「自分はどんなことが苦手で、どんな言葉が安心するのか」「相手はどう感じているのか」そんな小さな気づきが増えていきます。
SSTは、“うまく話せない自分”を責める代わりに、“自分らしい関わり方”を探す時間でもあるのです。



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