日本で生まれ日本で育った私にとって、海外の学校生活というのはイメージの範囲を出ません。
しかし子どもの立場で考えてみたときに、ある日日本から海外へ移住することになり、移住することの意味を理解しきれないまま、それまでいた友人と離れ、全く新しい環境のなか、言葉も違う、文化も違う、考え方も違う、過ごし方も違う、ときにそれまでの言葉が通じない、やりたいことがうまくできない、そんな場所に「ここで過ごすことになった」「行かないといけないから」と送り込まれたとしたら…。
安心できていた場所や人が、一気になくなってしまって、不安や恐怖心が湧いてくるのも当然のことだと考えられそうですね。
海外転勤・移住は大人の事情としては仕方のないことであり、人生の中の大きな試練の内の一つ、とも考えられるかもしれません。
そして大人としてもストレスフリーなわけではなく、苦悩していることもたくさんあります。
子どもからしてみたら、未知の場所での不安や恐怖に襲われたり、泣いてしまったり、親の様子を見て心配をかけまいと頑張ってしまったり…。
子どもそれぞれの個性や状況によっても異なりますが、様々な負荷がかかっているかもしれません。
「最初は大変だけど慣れるまで約3か月」という話を通説として、日本から現地校へ転校してきた保護者の方からよく耳にしました。
もちろん、3か月というのはあくまで目安であって、結論としては『人による』というのが実際の印象です。
ほとんど動じない子もいれば、数週間から数か月必要な子、3か月よりももう少し時間が必要な子など、実にさまざまです。
学校はもちろん、そうした事情を理解したうえで対応をしてくれるところは多いですが、対応をしてくれても、子どもの心の準備としてまだ万端ではない、不安や恐怖心があって一人で前へ進むには難しく、気持ちの整理や前を向く準備時間を要している段階と考えられます。
そんなとき、お子さまのサポートが大切になってきます。
特に、お子さんが信頼している人(お父さん、お母さん、ご家族やサポーターなど)の存在は大きく、不安な気持ちに耳を傾け受け止めたり、楽しいと思える時間を積極的に取り入れたり、学校に向かった時には「よく頑張ったね」とほめるなど…
根気よく支え続けることも必要になってくるかもしれません。
我が家の場合も、最初はさまざまなストレス反応もみられ、なかなか大変な時期を過ごしたました。
移住当時、子どももおしゃべりを楽しめるような年齢でしたので、現地校に入ることによって変化した事象はかなりストレスとなっていたようです。
子どもであっても、場合によっては身体的な反応として、眠れない、食欲不振、夜驚、自家中毒などが生じてくることもあります。
子どもにストレスがかかっているとき、守れるのは傍にいる大人です。
支えるポイントを以下に記してみますので、必要な方にとってお役に立てば幸いです。
①子どもを抱きしめる
ぎゅっと抱きしめてあげることで、安心感や安らぎを抱きやすくなります。
②子どもの話を聞く
子どもが話しかけてきたとき、ぜひ目線を同じ高さにして、子どもの話に耳を傾け、話される内容に「そうだね」「不安だよね」「頑張っているね」などと共感を示してみてください。
話された言葉をおうむ返しする(例:子「こわかったの」、大人「そうか、怖かったんだね」)でも大丈夫です。わかってもらえる、という安心感を抱きやすくなります。
③頑張っていることを言葉で伝える
「今日も学校いけたね!お疲れ様」などこちらからのフィードバックを伝え、頑張っているところを見ている、応援していることを伝えることも子どもの自信へと繋がっていきます。
④ごほうび
新しい生活、行動をポジティブに理解し取り込んでいくために、取り組んでいる行動に対しごほうび(応用行動分析において【強化子】と呼ばれる)をあげることも有用です。
本人が喜ぶものならなんでも強化子になり得るのですが、いくつか種類を持っておくと使い分けられて良いです。
褒める以外にも、お菓子、ジュース、シール、遊び時間など、本人が喜ぶものを強化子として利用するといいですね。
そして例えば、1日学校にいけたことへのごほうび、金曜日終えられたからちょっとスペシャルなお菓子、など、うまく使い分けながら、学校へ行くことへのハードルを下げ楽しいものとして理解していく道筋をつくっていくことも一つの方法として考えられます。
そうして3歩進んで2歩下がりながら日々を過ごすうちに、学校であったいいこと、あるいは悪くなかったことが話されるときが来るかもしれません。
そんなときには、「良かったね」「すごいね」などとその事柄について必要十分なポジティブなフィードバックをできるといいですね。
そうしていくうちに、だんだんと慣れていくことができていくのではないかと考えます。
ところで、大人にとっても海外に移住された直後には、移住した大人も手続きや環境への適応で大変な時期であることも少なくなく、それぞれに負荷のかかっている状態であることも少なくありません。
自分自身もストレスを抱えながら、子どもの状態をサポートするというのも、なかなかハードで大変に感じられることもあるかと思います。
そうなると、まさしく危機的な状況にいるところ。
なので、日常生活の優先順位を立てて、何が大事か、何のクオリティを落としてもいいかを見つけ生活に取り入れ、なるべくストレスを減らし、十分な時間をかけて適応しつつ出来ることを増やしていけるといいかもしれませんね。
たとえば、引っ越しの片づけ、買い物、掃除、洗濯などの頻度を最初は可能な範囲で落とし、なんなら普段の10%くらいにしてもいいのです。
普段は毎日していたことかもしれませんが、極論、それと同じようにしなかったことで明日生きられないわけではありませんね。
それよりも、命や健康を守る方が優先ではないでしょうか。
元気が出てきたら、だんだん気持ちも外に向いてきて、出かけたりチャレンジしたりしたい気持ちも湧いてきます。
本格的に活動するのはそれからだって遅くないです。
むしろ、やりたい、という気持ちが湧いてきたときこそタイミングであるとも考えられます。
休むときはしっかり休み、低空飛行を続けて上昇していくタイミングを見計らうこともときに必要です。
無理に頑張りすぎると、それは無理に頑張っているので、いつかどこかで崩れてしまいかねません。
状況が変われば、出来ていたことが一時的に出来なくなることはあります。
出来ていたことが出来なくなることは、何も悪いことでもなく、怠けているわけでもありません。
どうかできない部分に注目して責めるのではなく、出来ないほどの状況であることを意識し、新しいリズムを作っていく、出来るようになるように回復していくための必要な休息をしっかりとっていただけたらと願っています。
そして皆さんの生活が楽しく素敵なものとなりますように。
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