どうせ~だ…という思い込みは本当だろうか?【予言の自己成就】
- popo
- Feb 13
- 5 min read
「自分はどうせ失敗する」
「この人はきっと私を嫌っている」
—— こうした考えが、実際に現実になった経験はありませんか?
これは心理学でいう 「予言の自己成就(Self-Fulfilling Prophecy)」という心のメカニズムの一例です。
この概念は、単なる偶然や思い込みではなく、自分で「こうなるのではないか」と思って(予言して)行動していると、実際にその予言が現実のものとして成就してしまうという現象のことをいいます。
思い込んでいた通りのことが結果的に起きてしまうので「やっぱりね」「そうだと思った」という風に予言が強化されるのです。
予言の自己成就は、私たちの思考や行動がどのように現実に影響を与えるかを説明する重要な心理学的現象でもあります。
このメカニズムがどのように働くのか、具体例や日常での活かし方についてご紹介したいと思います。
予言の自己成就とは?
予言の自己成就とは、アメリカの社会学者 ロバート・マートン が1948年に提唱した「ある予測や信念が私たちの行動を変化させ、その結果予測通りの現実を引き起こす」 という心理現象です。
平たく言うと「こうなるだろう」と思い込むことで、それが現実になってしまうというメカニズムです。
例えば、
予言(予測・思い込み)「人前で話すのが苦手だ」
→ 緊張して声が震える
→ 聞き手の反応が悪く感じる
→ 「やっぱり私は苦手だ」
予言(予測・思い込み)「どうせ試験は失敗する」
→勉強や練習に身が入らない
→ 結果が振るわない
→「やっぱり失敗した」
こうしたループによって予言が「自己成就」してしまうのです。
予言の自己成就の具体例
・ピグマリオン効果
教育の場で、教師が「この子は優秀だ」と信じて接すると、その子は実際に成績が向上しやすいことが研究で示されています。逆に、「この子は成績が悪い」などと期待されなければ、本来の能力が発揮されにくくなることがあります。
先生から期待をされることで、子ども(生徒)はやる気を出し、成績が上がる。というメカニズムです。
これは「ピグマリオン効果」と呼ばれています。
・人間関係における影響
「この人は私を嫌っている」と思い込むと、警戒した、ぎこちない態度をとってしまい、相手もよそよそしくなってしまうことがあります。そうすると、→ 結果的に、関係がうまくいかなくなってしまうというメカニズムです。
とたえば職場で「自分と話すような仲の良い同僚は出来ない」と思いこんでいると、同僚と距離を取る関りとなり、同僚もあなたに話しかけづらくなり、結果として関係がぎこちなくなる。というメカニズムです。
・メンタルヘルスへの影響
「私はダメな人間だ」と思い込み、挑戦する機会を避けてしまいがちになると、実際に相対的な挑戦や成功体験が少なくなり →「やっぱりダメだ」と確信する。
これは 学習性無力感 にもつながる重要な要因です。
面接で落ちた経験から「私はどこにも受からない」と思い込んでしまい、自信をなくし、次の面接でもうまく話せなくなる。その結果”不採用"となり「やっぱり…」と確信を強める、といった悪循環に陥ってしまうことがあります。
「予言の自己成就」について、なんとなくイメージが湧きましたでしょうか。
上記の説明ではネガティブな例の紹介が多くなってしまいましたが、予言の自己成就は必ずしもネガティブなものばかりではありません。
思い込みの部分をポジティブなものにすることで、理論上前向きな自己成就を目指すことも可能となってきます。
予言の自己成就をポジティブに活かす方法
・自己肯定的な「予言」を設定する
たとえば、「どうせ無理だ」という思いがある場合には、「成長できる」「できる範囲でやってみよう」「練習をして出来るようになれる」「どうすればできるかな」などという言葉を意識してみるのもいいですね。
例えば、
「私は初めてのことが苦手」→「少しずつ慣れていける」
「運動はできない」→「5分だけもストレッチしてみようかな」「散歩で歩ける時間を5分伸ばしてみよう」
などといった具合です。
・「もし○○だったら?」と考えてみる
例えば、「私は嫌われている」と思ってしまうことがあったときには、「本当にそうかな」「単なる思い込みだったら?」と問い直してみるのです。
そうすると、友人や同僚が返事をしてくれなった→「やっぱり嫌われているんだ」といった思いが生じた場合には「もしかしたら、聞こえてなかっただけかも」「別のこと考えてたのかも」「前回は返事してくれたよなぁ」と視点を変えてみることができるようになってきます。
・小さな成功体験を積む
自己成就のポジティブなサイクルを作るために、「小さな達成」を意識するのも効果的です。
例えば、英語を話せるようになりたい、という目標があるときに、いきなり流暢に話すのは難しいかもしれません。なので、大きな目標に近づいていくための小さなステップを設定して、「今日は英単語を3つ覚えよう」「挨拶をしてみよう」などと小さく始めてみると、立てた目標を達成しやすく、”できた”感覚を積み重ねていきやすくなります。
・ 他者への影響も意識してみる
可能であれば、「自分が周囲にどんな期待を持っているか」ということに気をつけてみることも大切です。例えば「この人はダメだ」「できない人だ」などと思うと、知らず知らずのうちにそういう態度でその人に接してしまい、結果的にその人の可能性を狭めてしまう可能性があります。
子どもでも大人でも、「どうせできない」「無理だ」などと思うのではなく、「少しずつ練習したらできるようになるよ」「できるところからやってみよう」と声をかけてみられるといいですね。
私たちの「思考」は、気づかぬうちに私たちの行動に影響を与え、その結果にも影響を与えています。
だからこそ「どんな予言を信じるか」が大切になってきます。
どのようなシチュエーションで、誰に、あるいは自分自身に対して、どんな”思い込み”を持っているでしょうか?
生活のなかで、「どうせ○○だ」と思ってしまっているところがあるとしたら、この機会に見直してみるチャンスかもしれません。
現時点でネガティブなものがあっても、きっと少しずつ前向きなものへ変えていけます。
あなたの「自己成就の予言」を振り返り、より前向きなものに変えていけるといいですね。
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