精神医療の難しいところのひとつには、病気や抱えている困難さが物体として見えない(見えづらい)というところが挙げられます。
そういったものを、基本的にはことばのやりとりのなかで見つけてアプローチをしていくのですが、セラピストもご相談くださる方もお互いに人間なので、どうしても『相性』というものが関わってきてしまうことがあります。
セラピストもたくさんの勉強・研鑽をつんでいて、一定の知識を備えているはずですが、その前に一人の人間でもあるため、見た目、話し方、声のトーン、考え方というのもさまざまです。
身近な人間関係を思い浮かべていただいたときに、ある人は誰かと仲がいいけど、別の誰かとは仲が良くないとかいうことがよくあるかと思います。
カウンセラーなどにもそういう部分は少なからずあって、誰かにとって良いカウンセラーは、誰かにとってはそうでもないことはよくあります。
なので、どうしようもないような結論ではありますが、あなたにとって良いと感じられるカウンセラーが、良いカウンセラーなのだろうと考えられます。
どんなに経験のあるカウンセラーでも合わない場合もあれば、ばっちりと自分の感覚に合うようなカウンセラーがいることもあります。
もちろん、精神医療といっても、ご相談の内容について多様な領域・種類がありますので、あなたご自身がどのような相談をしたいか、どのような考え方をするタイプかといったことは、カウンセラー選びをするにあたってヒントになりえます。
カウンセラーがそのことについて知っているか、専門としているかを調べ、専門としている場合にはひとつの手掛かりとすることができるでしょう。
専門家の多様性について、私の知っているひとつの例を挙げます。
Aさんが、「急に毎日鼻血が出るようになった」とそれぞれ3人の医師に相談しました。
そうするとある医師Bは「鼻の粘膜を焼くといい」とアドバイスします。
医師Cは「それは大変ですね、鼻の入り口にワセリンを塗るだけでも効果が期待できます」とアドバイスします。
医師Dは「鼻ほじりすぎなんじゃない?ほかに出血してるわけじゃない?」とアドバイスします。
簡単な例ですが、1つの質問に対し、同じ専門職(この例では医師)でも答え方が全く異なります。
つまり、その人によって答え方は様々であり、自分自身がどのような回答を心地よく感じるか、安心するか、というような感覚が判断材料として大切なポイントにもなってきます。
知識が不可欠なのは大前提ではありますが、相手の人間性というのも精神医療ではとても大切なポイントです。
こういった人間性を知ることは数回のやりとりを重ねないとなかなかわかりづらいかもしれません。
最初は合うと思ったけど「なんか違う」と感じることもあれば、最初はぎこちなさがあったけどリズムが出来てすごく合うようになった、ということも起こり得ます。
また、お互いの体調によっても、考え方や受け取り方には変化が生じますので、そこも難しいところです。
これが、良いカウンセラーを見つけることの難しさの一つとして考えられるのです。
数いるカウンセラーの中に、あなたにとって良いカウンセラーはきっといるかと思います。
ああ、この人になら相談してみたいな、もう少し続けてみようかな、と思えるカウンセラーに出会えますことを心から願います。
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