解離とは
- popo
- Apr 22
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Updated: Apr 23
診断のひとつに「解離性障害」という精神疾患が存在していることからもなんとなくにもイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんね。
一昔前には「二重人格」「多重人格」という言葉(現代で言う解離性同一症)がよく聞かれるような時期や、ダニエル・キイス氏の「24人のビリーミリガン」という本も流行った時期もありました。
センセーショナルに取り上げられるようなこともある中、どれだけ『解離』について理解が浸透しているかというとなかなか専門家の間でさえ意見が分かれるほど難しさを含んでいるようです。
必要に応じて精神医学的なお話は用いつつも診断的治療的な話というよりも、心理の立場から『解離』についてお伝え出来たらと考えています。
少しでも理解を深めていくお手伝いとなれましたら幸いです。
〇解離とは?
そもそも「解離」という概念は、19世紀末にフランスの精神科医であったJanet,Pが『心理学的自動症』で「解離」という言葉を用いたのが最初だと言われています。
解離は、自分にとって受け入れがたい出来事や感情を自分の心から切り離し、統合された機能(意識、記憶、アイデンティティ、知覚など)が一時的に失われた状態です。
そして、この解離は、日常生活の中で誰にでも起こるものから、「解離性同一症」といった疾患として捉えられるものまで、グラデーションがある(スペクトラム)として考えられています。
日常で体験するものというと、例えば白昼夢(空想にふける)、没頭していて時間を忘れたり声をかけられても気が付かない、車や電車などで気づいたら目的地についていた…などがあります。
この間の記憶が無かったり、曖昧だったりするようなご経験のある方は、きっと少なくはないでしょう。
そしてこれを体験しているのは、「あなた(私)」ですね。
しかし、解離の作用の仕方が病的に傾いてくると、表現のされ方も変わってきます。
強いストレスやトラウマが引き金となって、自分の記憶や身体感覚、現実感に対する一貫性が失われることが生じてくるとされ、そのあらわれ方は実に様々で、一口に説明するのは容易ではありません。
苦しさや悲しさなど感情が感じられづらい、あるいは感じられなくなる、
急に言葉が出てこなくなる、
痛みを感じない、
上から見ている、着ぐるみや膜を通してみているように感じる、
手や脚など身体感覚がなくなる、
意識、記憶がなくなる…
など、さまざまな場合があります。
そして、自分では意識してコントロールすることは難しく、急に生じることがあるものですから、周囲の人にとってのみならず、本人にとっても驚いたり戸惑ったりしてしまうこともも少なくありません。
主に長期的、慢性的に大変なストレスにさらされることによってこういった症状が表現されてくる傾向があります。
そして解離性同一性障害(DID)と呼ばれる障害が生じているときには、自分の中に別の人格(考え、性格、性別や年齢もときに異なる別の人物)として存在することがあり、人格ごとに体験をし経験や記憶が共有されないことがあります。
〇病的な解離について
解離性障害について考えた際、発症には幼い頃の慢性的な虐待やネグレクト、暴力、災害や戦争などの命の危険のあるようなストレスに見舞われることが原因となるケースが多く見受けられるようですが、こういった経験をしたら必ず解離性障害になると断言できるものではありません。
心理学では耐えられないほどの強いストレスなどにさらされた際、自分の心を守るために感じるスイッチをシャットダウンするように、防衛反応として解離が生じるという考え方をします。
解離自体は正常な心を守る働きではあるのですが、長期的で慢性的なストレスにさらされることで、この解離が常に発動されるようになってしまうことがあります。
研究はなされているものの、詳しいメカニズムについてはわからないことが多いのが現状でもあります。
アメリカ精神医学会の診断の手引き、DSM-5では
・解離性同一症(DID) 複数の人格状態が交代して現れ、それぞれの人格が自律性をもって行動し、記憶の断絶が生じる。
解離性健忘 重要な記憶(エピソード記憶)が思い出せなくなる。かつての解離性遁走もここに含まれる。
離人症・現実感喪失障害 自分が自分でない感覚(離人)や、現実が遠く感じる(現実感喪失)。
特定不能の解離性障害(OSDD) 上記に該当しないが、明確な解離症状があるケース。
があるとされています。
薬物療法も用いられるようですが、治療のメインは精神療法とされています。
PTSDなどの心的外傷との関連からも、研究は多くなされており、エビデンスある治療法には確立されているもの(トラウマインフォームドケア、EMDRなど)がいくつか存在しています。
理解してもらえない、否定されるといった体験を通して傷つき不安が増幅されてしまうことも少なくありません。
理解ある専門家のアセスメントをしっかりと受け、解離症状に関する要因を取り除きながら、安心して自由に表現できるような他者との関係の中で、徐々に症状が和らいでいく傾向にあります。
〇周囲の人が出来ること
自分でコントロールのできない心身の感覚の消失や記憶を失うことなどは、それを体験している本人にとってもとても悩ましく苦しいものです。
ふと気が付いたときに、知らない場所にいたり、身に覚えのない出来事が生じたような痕跡を見つけたり、人間関係に変化が生じていたり…
なにがあったのかわからないといった恐怖や不安に襲われることも、
元の苦しさに加え解離の病的な側面によって引き起こされる悩みを持ち混乱していることをなかなか理解をしてもらえない苦しさも、
ご本人は懸命に大きな不安を抱えられ、ときに孤独感さえ抱かれながら助けを求めていることがあります。
突然人が変わったようになるなど、身近で起きた際には驚いてしまわれる方もおられるかもしれません。
ですが、それは決して変でも迷惑をかけているわけでもありません。
奇異な目で見たり、差別的に扱われることをどうにかして減らしていけたらと願わずにはいられません。
生きるために、心を守るための方略として解離という方法が用いられてきたことを心の片隅に置いておいていただけたらと願います。
そして、出来ることで大切なことは、本人が安心できる場所となること。
ときにそれぞれの人格に合わせた対応(外見は同じようでも、中身は違う方として)も大切です。
しかし、周囲の方は自分ひとりで全部引き受けようとされる必要はありません。
関係する方と、周りと、互いに支え合いながら少しずつにも不安を和らげ、環境を整えていけるといいですね。
興味本位でいろいろ聞いたりするようなことはせず、目の前の人(人格)が安心して過ごせるように、適度な関りの中で安心して過ごせるような環境を一緒に作り上げていくこともとても大切にしていただけたらと願います。
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